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環境技術レポート

分類:ごみ・リサイクル

レアメタルリサイクル技術の動向

ハイテク技術を陰で支えるレアメタル(希少金属)は、各国の消費量が拡大してきており、その安定供給に対する関心が高まっています。安定供給の一翼を担うものとして期待されるリサイクル技術について、事例をまじえながら最近の動向を紹介します。

※外部リンクは別ウィンドウで表示します

1.レアメタルの概要

 レアメタルは希少金属とも呼ばれ、文字どおり地球上での存在量が比較的少ない金属をいいます。国際的に統一された定義はありませんが、一般的に「存在量が少ない」あるいは「経済的・技術的に抽出困難」な鉱種を指して使われています。わが国では、経済産業省鉱業審議会レアメタル総合対策特別小委員会が、表1に示す31鉱種(ただし、レアアース(希土類)は17鉱種を総括して1鉱種とする)をレアメタルと規定しています1)

図1図1 レアメタル31鉱種の定義(鉱業審議会レアメタル総合対策特別小委員会)
(出典:総合資源エネルギー調査会鉱業分科会レアメタル対策部会「今後のレアメタルの安定供給対策について」(2007年7月))
出典URL:http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g70125ej.pdf

(注)レアアース17元素
軽希土;ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)
中・重希土;プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)

 レアメタルは、日本経済を支えている高品質・高機能製品の多くをはじめ、幅広い産業分野で利用されています(図2)。このうち、高度な機能を果たす部材に利用されているレアメタルの事例をまとめると表1のようになります。

図2図2 さまざまな用途に利用されるレアメタル
(出典:総合資源エネルギー調査会鉱業分科会レアメタル対策部会「今後のレアメタルの安定供給対策について」(2007年7月))
出典URL:http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g70125ej.pdf

表1 機能性部材に使用されるレアメタルの事例
鉱種用途
インジウム(In)液晶用材料、蛍光体、低融点合金、半導体素子、撮像管
タンタル(Ta)Taコンデンサ(携帯電話、デジタルカメラ、パソコン)
ニオブ(Nb)超伝導材、真空グレードNb合金(航空機エンジン)
レアアース(RE)永久磁石、セラミックコンデンサ、ブラウン管ガラス
ガリウム(Ga)半導体(GaAs)、LED(Light Emitting Diode)チップ(Ga燐)
リチウム(Li)Li電池正極材、弾性表面波フィルタ
白金族(PGM)燃料電池触媒、自動車用排ガス触媒、電気接点、熱伝対
ストロンチウム(Sr) ブラウン管、フェライト磁性材料、光ガラス
ジルコニウム(Zr)圧電セラミックス、核燃料被覆管

出典:「レアメタルリサイクルの基本的考え方」中村崇、『貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成』エヌ・ティー・エス、2007年)

これらのレアメタルは、それぞれ固有の性質をもっていますが、おおむね次のような共通の特徴があります。

<レアメタルの特徴>

  • 資源分布が地域的に偏在している。
  • 産業上のさまざまな用途に少量ずつ用いられる。
  • 元素としての発見が比較的新しく、製造プロセスが困難でコスト高なため、生産量が少ない。
  • 他の非鉄金属の副産物として産出される。
  • 価格が不安定である。
  • 各鉱種に特有の性質に基づいて利用されているため、代替物、代用品の開発が困難である。

2.安定供給の確保とリサイクル

 近年の鉱物資源をめぐる市場動向をみると、先進諸国はもとより経済発展が著しいBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などでの消費量が急速に拡大してきており、資源獲得競争や価格の高騰が激しくなってきています。レアメタルと呼ばれる金属もその例外ではありません。
 また、中国、ロシア・CIS地域(バルト三国を除く旧ソ連諸国)やアフリカ地域などでは、レアメタルの探鉱投資が拡大傾向にあります(図3)。

図3図3 世界の非鉄金属・レアメタル探査の動向
(出典:「レアメタルの探鉱開発ターゲットと我が国の資源戦略について」資源エネルギー庁鉱物資源課(2007年5月)「今後のレアメタルの安定供給対策について」(2007年7月))
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g70529c04j.pdf

 一方、わが国では、1983年度から官民協力のもとにニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バナジウムの7鉱種について「レアメタル備蓄制度」を実施し、円滑な産業活動の維持と経済的な安全保障の確立を図っています。
 また、資源獲得に向けた国際的な競争の激化に対応すべく、2007年7月には、総合資源エネルギー調査会鉱業分科会レアメタル対策部会が「今後のレアメタルの安定供給対策について」をとりまとめ、次のように安定供給確保に向けた取組の方向性を示しました。

<レアメタル安定供給確保に向けた取組の方向性>

  1. 重点的な海外探鉱開発の実施と資源外交
  2. 工程くずの発生抑制・リサイクルの推進
  3. 代替材料開発
  4. レアメタルの備蓄
  5. 統計の整備・人材の育成など

 こうしたなかで、現在、各方面から強い関心を集めているのが、レアメタルのリサイクルです。
 レアメタルは、他の鉱物の副産物として産出されることが多く、例えば世界最大のインジウム鉱山であった日本の豊羽鉱山(北海道)が、2006年に亜鉛精錬の休止にともなって供給を止めた例などをみても、長期間安定的に原料鉱石から精錬された製品を得る保証はありません。
 しかし、国内には、使用済みで廃棄される運命にあるレアメタル含有の製品がたくさんあります。リサイクル技術が確立すれば、図2や表1にみるさまざまな製品が廃棄されるときに、それらはレアメタルの重要な供給源に変身すると考えることができます。最近では、こうしたことから都会の廃棄物を鉱山に模して「都市鉱山」とも呼ばれるようになっています。

3.レアメタルの回収

レアメタルリサイクルの事業化の成否は、個々のレアメタルの種類や、市場の需給状況などによって異なります。資源の市場価格が高く、回収スクラップのレアメタル含有量が多い場合には、事業として成立しやすいといえますが、回収スクラップのレアメタル含有量が少なかったり、さまざまな他のレアメタルを含有していたりする場合は、事業化しにくいことも少なくありません。
 一般的に、金属スクラップをリサイクルする際に望ましい条件は次の5つがあげられます3)

<金属スクラップのリサイクル条件>

  1. スクラップがまとまって、継続的に、多量に発生すること
  2. 成分組成が安定しており、主成分の含有率が高く、他の成分との分離が容易なこと
  3. 有害成分が含まれていないか、あったとしても完全に分離できること
  4. 水分や油分の付着が少なく、汚れの少ないこと
  5. リサイクル成分の価格が高く安定しており、採算がとれること

 これらの条件をすべて満たしているレアメタル含有スクラップは、ほとんどありません。これらの条件のなかでは、特に1と5が重要な要素とされ、民間事業で行う場合の経済合理性が、レアメタルリサイクル事業化の可能性を左右しています。

4.レアメタルリサイクル技術の開発

 レアメタルのリサイクルについては、個々のレアメタルの物理・化学性状の違いや、レアメタル含有製品の含有率、利用方法、廃棄・回収事情の違いなどに基づいて、さまざまな技術が開発されています。ここでは、比較的需要量の多いレアメタルの例としてニッケルを、最近需要の伸びが目立つレアメタルの例としてインジウムを取り上げ、そのリサイクル技術について紹介します。

1)ニッケルのリサイクル

 ニッケルの主要な用途は特殊鋼です。特にステンレスはニッケルの用途の6〜7割を占めるとされています。このほか、非鉄合金、めっき、ニカド電池、ニッケル水素電池の電極、磁石、触媒などにも使われています。
 表2は2006年の世界のニッケル生産量をまとめたものです。日本ではニッケル鉱石の生産がなされていないので、ニッケル製品の原料はすべて輸入によってまかなわれています。

表2 2006年の世界の国別ニッケル生産量(推定、ニッケル純分ベース、国際ニッケル研究会)
順位 ニッケル鉱石生産 ニッケル製品生産
国名 生産量
(千トン)
国名 生産量
(千トン)
1位 ロシア 277 ロシア 277
2位 カナダ 234 カナダ 154
3位 オーストラリア 169 日本 153
4位 インドネシア 150 中国 137

「ニッケルの特性と需給」大山正紀、『貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成』エヌ・ティー・エス、2007年)

 一方、日本で生産されるニッケル製品の原料の国別輸入依存率はインドネシアが最も高く、67〜70%とされています4)。資源の偏在性に加えて特定の国への輸入依存度が高く、安定した原料供給に不安があることから、ニッケルのリサイクルの重要性が高まっています。
 ニッケルの主要用途であるステンレスのスクラップは、そのまま再度ステンレスの原料として使われており、ステンレスからニッケルを分別・回収することは行われていません。これは、特殊鋼や高合金なども同様です。なお、ステンレス製品の原料の約半分がスクラップステンレスだとされています4)
 また、自動車・機械、電気・電子機器、半導体などの表面処理に重要な役割を果たしているニッケルめっきについては、めっき加工後の廃液処理の経費が高騰していることと相まって、廃液からニッケルを選択的に分離して回収する技術の研究・開発が進められています(表3)。これらの技術は、水質汚濁の防止、埋立処分量の削減やレアメタルの再資源化に有効な技術として注目されています。

表3 めっき廃液からのニッケルリサイクル方法の事例
めっき種類 リサイクル方法名 技術の概要
無電解めっき 硫化物沈殿法 ニッケル含有廃液に硫化剤を添加して金属硫化物を形成し、その難溶性を利用した分離方式。ガスセンサの活用により実用化されている※ 1
晶析法 廃液中にニッケル種結晶を添加し、 pH 調節を行いながら還元晶析する方式 ※ 2
イオン交換樹脂法 廃液をニッケル高選択性イオン交換樹脂に通して吸着する方式 ※ 3
溶媒抽出法 酸性有機リン抽出剤によって亜鉛などの不純物を除去した後、キレート剤などの抽出液によって抽出する方式 ※ 2
電気めっき 硫化処理法 廃液に硫化剤を添加し、銅、亜鉛、ニッケルの分離回収を図る方式 ※ 4

※1 (株)みすず工業「SSプロセス」

※2 「無電解ニッケルめっきにおける使用済み液からのニッケル回収とめっき液の長寿命化」田中幹也、『貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成』エヌ・ティー・エス、2007年

※3 ミヤマ(株)「再資源化(リサイクル)」

※4 「めっき廃液中の銅、亜鉛およびニッケルの選択的分離回収技術」福田正、松田仁樹、『貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成』エヌ・ティー・エス、2007年

 このほかのニッケルリサイクルとしては、石油精製の水素化脱硫触媒に使われるモリブデン系触媒からニッケルを回収し、鉄鋼原料やフェロニッケルの原料などとして利用されているがあるほか、ニカド電池、ニッケル水素電池の回収・リサイクルを、有限責任中間法人JBRCが行っています。また、ハイブリッド自動車の使用済みニッケル水素電池からのニッケル回収について、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構技術開発を行い、高い回収率が実証されたことから事業化が期待されています。

2)インジウムのリサイクル

 インジウムは、酸化スズが微量に添加されることで透明な高性能導電体になることから、フラット・パネル・ディスプレイ(FPD)に用いられ、液晶テレビやプラズマテレビなどに使われています。薄型ディスプレイの大型化や市場の拡大に伴って、FPDに用いられるITO(インジウム・スズ酸化物)ターゲット材の需要が急速に伸びています。ターゲット材とは、スパッタリング法において薄膜を形成する際に使われる材料のことです。
 表4はインジウムの国内需給の推移を示したものですが、需要のほとんどが透明電極関連に使用されていることがわかります。同時に、リサイクル品である2次地金の供給量が増えていることがわかり、その重要性をうかがうことができます。

表4 インジウムの国内需給の推移(単位:トン)
    2005年 2006年 2007年

1次地金生産量 76 89 121
うち国内鉱山産 30 8 0
2次地金生産量 350 530 680
輸入量 422 433 420
供給計 848 1,053 1,221

透明電極関連 656 850 1,108
透明電極関連以外の需要 40 38 38
需要計 696 888 1,146

※斜体の数字は推定値

(出典:「インジウムの特性と需給およびリサイクル動向」より抜粋。上木隆司、細井明、『貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成』エヌ・ティー・エス、2007年)

 インジウムのリサイクルは、ほとんどが製造工程で発生する使用済みITOターゲット材の回収によるもので、ITOターゲット材のうち約70%が使用済みスクラップとしてターゲット材メーカーやリサイクルメーカーへ戻されています。この使用済みITOターゲット材は、一般的に、塩酸溶解→中和→置換析出→溶解・鋳造→電解精製という順で処理され、インジウムの2次地金が生産されます。
 一方、製品として消費者の手にわたり、買換えなどによって不用となった液晶・プラズマディスプレイからインジウムを回収することは、これまでほとんど行われていませんでした。これは、インジウムの付着量が微量であることやスクラップの置き場確保の問題などがあったためです。しかし最近、インジウムの価格上昇や需要増などを背景に、こうした最終製品からインジウムをリサイクルする技術の研究・開発が進められています(表5)。

表5 使用済みITOターゲット材以外のスクラップ等のリサイクル技術の事例
技術の概要 研究・開発事業者
携帯電話LCDディスプレイから乾式製錬によるインジウムの回収※5 埼玉大学、横浜金属(株)
粉砕した廃LCDパネル表面のITOを塩酸溶解し、イオン交換樹脂に吸着させて回収※6 シャープ(株)、(株)アクアテック
PDPパネル基板表面剥離粉末からのインジウム回収※7 旭平硝子加工(株)
エッチング廃液および廃液晶パネルからのインジウム回収※8 (株)神鋼環境ソリューション
LCD基板ガラスからのサンドブラスト法によるインジウム回収※9 (株)電硝エンジニアリング

※5 神鋼リサーチ(株)「希少性資源の3Rシステム化に資する技術動向調査報告書」(PDF)

※6 シャープ「廃液晶パネルからのインジウム回収・リサイクル技術」

※7 環境省 「プラズマディスプレイパネルのリサイクル技術開発」(PDF)

※8 「廃液中からのインジウム高回収技術」前背戸智晴、知福博行『貴金属・レアメタルのサイクル技術集成』エヌ・ティー・エス、2007年

※9 「LCD装備製品からのインジウム回収技術」住母家岩夫『貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成』エヌ・ティー・エス、2007年

5.レアメタル対策の最近の動向

 ここ数年のレアメタルに対する関心の高まりのなかで、安定供給の確保以外にも、代替材料の開発や、使用量の削減、レアメタル使用製品の長寿命化などを目指した、さまざまな方策が打ち出されています。
   そのひとつが文部科学省の「元素戦略プロジェクト」です。平成19年度から始まったこのプロジェクトでは、まず、物質・材料の機能・特性を決定する元素の役割・性格を研究し、この研究成果を踏まえて、[1]希少元素や有害元素を使わない高機能の物質・材料の開発、[2]材料設計技術の徹底的な活用による革新的新材料の開発、[3]既存材料の新機能の創出、を目的として、5年後に具体的な代替材料作成のための研究に取りかかることをめざしています。
 また、経済産業省では、「希少金属代替材料開発プロジェクト」を平成19年度から開始しています。このプロジェクトは、情報家電、ロボット、電池など新たな産業分野の拡大によって需要増大が確実視されているインジウム、ディスプロシウム、タングステンの3鉱種に目標を絞り、5年後に「透明電極向けインジウム」、「希土類磁石向けディスプロシウム」、「超硬工具向けタングステン」の代替材料、使用量低減技術を実用化することをめざしています。
 このような研究・開発プロジェクトや前述のレアメタル備蓄制度などをみても、わが国においてレアメタルをめぐる取組は強化されてきているといえます。こうしたなかで、レアメタルリサイクル技術の研究・開発、実用化の重要性はますます高まっており、今後の開発成果に期待が寄せられています。

(引用・参考資料など)
1)総合資源エネルギー調査会鉱業分科会レアメタル対策部会
「今後のレアメタルの安定供給対策について」(2007年7月)(PDF)
2)資源エネルギー庁鉱物資源課
「レアメタルの探鉱開発ターゲットと我が国の資源戦略について」(2007年5月)(PDF)
3)(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
「レアメタルのリサイクル流通状況調査報告」(2007年6月)(PDF)
4)「ニッケルの特性と需給」大山正紀、『貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成』エヌ・ティー・エス、2007年
5)『貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成』エヌ・ティー・エス、2007年
6)『レアメタル安定供給に向けて』産業新聞社、2007年
7)(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構希少金属備蓄部
8)(社)特殊金属備蓄協会